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| 7 二人の間に再び静かな空気がただ流れる。互いに相手の力量を推し量 っているかのように微動だにもしなかった。 いつまで続くかわからない静寂・・・・・。だが、その均衡はついに破られる。 「行くぜ!」 最初に行動に移ったのはジョウスケの方だった。ジョウスケは、右手だけで銃を持っ たままヴァルゼリオンに向けて、三点バーストで連射してきた。無論ジンも、そんな あまりにもテレフォンな攻撃を喰らう筈も無く、上半身の動きだけで弾丸を避ける。 「へえ・・・・・、さすがだな。こんなんじゃ意味が無いみたいだな」 「まあな。それに所詮ハジキだ。見たところドラムマガジンもついてないから、多く ても15発程かわせば武器としての意味は無くなる。その間はハンデくれてやるよ」 「そいつは、どうも。じゃあ、遠慮なく!」 ジンの挑発に自らはまったのか、ジョウスケはヴァルゼリオンに対して、銃弾を高速 で連射する。だが、それは結局先ほどと同じで、ヴァルゼリオンに対しては全く効果 が無かった。 そして数秒後・・・・・・。ついにヴァルレオンの銃から、弾丸の発射が止まった。 「くそっ! ジョウスケは、マガジンを取り替えようとジンから一瞬目を離す。それを確認したジ ンは、ここぞとばかりに間合いを詰める。 ジョウスケは、完全に間に合わない・・・・・・。それがその場にいた者、ほぼ全てが感じ た事だった。だが・・・・・・敗北が確定しようとしているジョウスケ本人は違った。むし ろジョウスケは敗北への不安や焦りを感じるどころか、余裕で笑みすら浮かべてい た。 「全くせっかちな奴だな・・・・・・。もっと余裕持っていこうぜ?こういう風に!」 その時ジョウスケは、目前まで迫っていたヴァルゼリオンに対して、マガジンを変え ないまま銃口を向けた。それを見て、カズエは嘲笑気味に呟く。 「無駄なあがきよ。銃弾の入ってない銃なんて、何の――――」 「G・テリトリー展開!!」 「えっ!?」 ジンは、カズエの言葉を無視するかのように、突然頭部に、収束させたGテリトリー を張る。その次の瞬間、ヴァルレオンの銃口から、尽きたはずの銃弾が撃ち出されて 来た。 「来た!!」 「嘘っ!?」 飛んでくる弾丸に対して、正反対の反応を見せるジンとカズエ。カズエの方は予想外 だったが、ジンは、ヴァルレオンの・・・・・いや、イスルギの機体の使う武器が、 通常兵器と同じ弱点を残しているとは、微塵も考えていなかったのだ。 それを見越して、『飛んでくる弾丸をG・テリトリーで受け止め、そのまま拳を入れ る』という反撃のパターンを立てた後、ヴァルレオンに向かっていったのだ。 そして、撃たれた弾丸は、ジンの予測通りに、展開したG・テリトリーに吸い込まれる ように向かって来た。 だが・・・・・・・・ 「何っ!?」 ジンは、その瞬間、自分の目を疑った。ヴァルレオンの銃から撃たれた弾丸は、G・テ リトリーに止められるどころか、何の抵抗すら感じさせずにG・テリトリーを貫通、い や穿って来た。その時点で、既に弾丸とヴァルゼリオンの距離は数mを切っていた。 「くそっ!!」 弾丸は、もはや避けるという判断すら出来ない距離にまで迫っていたが、ジンはとっ さに自分の体に重力をかけてその場に倒れこむ。間一髪で間に合い、弾丸は、ヴァル ゼリオンの後頭部のスレスレを飛んでいった。それと共にヴァルゼリオンは、地面に 顔面から突っ込んだ。 「うお、すげえな。よく避けたもんだ」 「ははは・・・・・。まあな・・・・・」 ジョウスケは、倒れているジンに対して拍手をしながら、偽りの無い賛辞の言葉を 送ってきた。ジンも、その言葉に怒る事も無く、笑いながら立ち上がる。 「それにしても・・・・・・Gテリトリーを何の抵抗も無く穿つとはな。どんな仕掛 けだよ?」 「これか?これは特別製なんだよ。ヴァルレオン・ワンオフのな」 ジョウスケは、右手の銃を人差し指を軸にして、玩具でも扱うように回転させながら 話を続ける。 「この銃の名前は『アクセルレイダー』。地球上で唯一『アブソルト・パーフォレイ ション・システム(以下APS)』を使用できる銃なんだ。もっとも、名前は勝手に 付けさせてもらったけどな」 「APS?」 「まあ、詳しい原理は知らないけどな。聞いたところによれば、重力を弾丸にドリル 状に纏わせる事でありとあらゆる障壁を威力を減殺する事無く穿孔するシステムだそ うだ。言っててもよくわかんねえけど、まあ強力な兵器って事だ。 あ、言っとくけど弾丸が切れるまで粘ろうとしても無駄だぜ。こっちはレールガンと 同じで射出する弾丸が極小にできているから、弾数が数万以上入ってるからな。ちな みにストライクガン(打撃武器としても使用可能な拳銃。基本的に銃口や銃底を使 う)だ」 ジョウスケは、笑いながら言っているものの、その言葉はジンとカズエにとっては恐 るべき宣告だった。 一切の防御が不能な兵器・・・・・・それは特機の特徴である強固な装甲と特殊防護障壁を 完全に無意味にする物であり、特機を裸の人間と同等にしてしまう。そしてそれが数 万以上ともなれば、弾丸切れを狙うのも不可能だ。もはやカズエの頭には、現状の打 開策など浮かばず、浮かんでくるのは『絶望』の二文字だった。 しかし・・・・・・・ 「なるほどな。それじゃあ絶対に当たるわけにはいかないって事か。結構、大変だ」 「大変って・・・・・お前」 ジンの言葉にジョウスケは笑った。だが、それはジンを嘲笑したわけではなかった。 「じゃあ、大変ついでにさ、見せてくれよ」 そう言いながら、ジョウスケは間合いを取りながらアクセルレイダーを構えた。それ に対抗してジンも構えを取る。だが、その構えはさっき見せていたオーソドックスな 構えとは違っていた。 ジンの構えは、俗に言う『フリッカースタイル』と呼ばれる物で、しなりのあるフ リッカージャブを打つ為の構えである。だが、ヴァルゼリオンとヴァルレオンの距離 は、200Mはあり、傍目にはジャブの届く距離ではなく、ジョウスケからしてみれ ば、明らかに無意味としか言いようが無かった。 「おいおい、それ本気か?ジャブなんかが当たる距離じゃないぞ?」 「いいから、気にすんなよ。面白いもの見せてやるからよ」 「本気かよ・・・・・・・。じゃあ、行くぜ?」 ジョウスケは、ジンの態度をいぶかしがりながらも銃を持った右手を動かす。 その瞬間・・・・・・ 「!!」 信じられない事に、ヴァルゼリオンが一瞬であの間合いを詰め、ヴァルレオンの顔面 に向かって、凄まじい速さで左のリードジャブを撃ってきた。 「うわっ!!」 とっさに反応したジョウスケは、両腕で顔面をガードし、ヴァルゼリオンのリード ジャブの直撃を防ぐ。だがそれは、ジョウスケにとって良い状態とはいえなかった。 ジンは、ガードするヴァルレオンに対して、矢継ぎ早にジャブを撃ち込む。そのジャ ブは、並みのマシンガンを軽く凌駕するスピードでヴァルレオンの両腕に速射され る。 「うっ、やべえ!!」 今の状態が、圧倒的に自分に不利なのを悟ったジョウスケは、バックステップして大 きく間合いを取り、ペースを自分に戻そうとした。 だが、それは不可能だった。ジンはジョウスケのバックステップより速い速度で踏み 込み、ヴァルレオンのボディに左ショートアッパーを放つ。ジョウスケもとっさに反 応して、その拳をアクセルレイダーの銃底で防ぐ。だが、その行動によって、ヴァル レオンの顔面のガードががら空きになった。 「もらった!!」 ジンはその隙を見逃さず、ヴァルレオンの顔面めがけて右フックを放つ。拳は、狙い をそれる事無く放たれ、重金属がぶつかる独特の音を周囲に響かせた。 終わった・・・・・。カズエも、周りで見ていたイスルギの隊員達も、それを革新してい た・・・・・だが―――― 「ハハハハハハ・・・・・」 ジンは、なぜか突然笑い出していた。 「ハハハハハ。ようやく・・・・抜いたか」 ジンの言葉を聞いた回りの者は、いっせいにヴァルレオンへ視線を向ける。そこには 左手にもう一丁の銃を持ち、銃底でヴァルゼリオンの拳を防いでいるヴァルレオンが いた。 「何だよ・・・・・気づいていたのか?俺がダブルアームズ(二丁拳銃)だって事・・・・」 「見てればわかる。左手が手持ち無沙汰みたいだったからな」 「へえ・・・・。じゃあ、こっちまでわかってたか?」 その言葉と共に、ジョウスケは、右手の銃をヴァルゼリオンの顔面に突きつけた。ジ ンは、その動きに反応し、すばやく左の肘で銃底を突き上げ、射線をずらす。 「こんな動き読むほどじゃねえな」 「そうだろうな。だけど今度はどうかな!?」 「!?」 ジョウスケの言葉と共に、ヴァルレオンは左回りに回転しながら一歩踏み込み、左の 銃を再び顔面に突き付ける。その速さはさっきのヴァルレオンの動きとは段違いだっ た。ジンは、その動きの速さに面食らいながらも、動きに反応してヴァルレオンの左 腕をバリングする。 だが、それでもヴァルレオンの動きは止まらなかった。左腕が弾かれるよりも早く、 右手の銃をヴァルゼリオンのコクピットに突きつけた。 「うっ!?」 ジンは、何とか突きつけられた銃を左手で払い、ヴァルレオンに左前蹴りを放つ。 ジョウスケは、それに反応して後に飛びのいて間合いを取った。二人はある程度の間 合いを保持したまま立ち尽くし・・・・・笑った。 「フ・・・・ハハハ・・・・ハハハハハハハ!」 「ハ・・・・アハハ・・・・アハハハハハハ!」 この状況で、楽しそうに笑う二人をその場にいる他の人間は誰一人理解できなかっ た。だが、そんな事など二人はかまいもせずに笑った。 「ハハハハ・・・・・まさかな・・・・・。拳銃を零距離で振り回して使う奴がいる とはな・・・・。面白い奴もいたもんだ」 「まあ普通に銃を使うんなら、ハンドガンよりもライフル使えば良いって事になるか らな。それじゃつまんないし、なにより個性の欠片も無い感じするだろ?だから俺な りのスタイルってやつが欲しかったんだよ」 「なるほどな・・・・・」 「それにさ・・・・・強かったろ?」 「ああ・・・・・」 「出したくなったろ?本気」 「ああ・・・・・」 「俺も出すからさ。出してくれよ」 「ああ・・・・・!!」 ジンが語気を強めた瞬間、一瞬でその場の空気の質が変わった。ジンもジョウスケも 重力を操作してはいないのに、周囲にいた者は空気そのものが突然鉛のように重く、 氷のように冷たくなったように感じていた。 張り詰めた空気の中、ジンとジョウスケは再び構えを取る。ジンは体中でリズムを取 る、打撃系の構えを、ジョウスケは仁王立ちからレフとアームズを前に、ライトアー ムズを肩に担ぐような構えを取った。 ジンもジョウスケも、さっきまでの友人同士のやり取りような様相とは明らかに違 い、強烈な殺気が押さえ込めずに体中から漏れ出していた。 誰もが言葉を出す事すら出来ぬ中、ジンとジョウスケは一瞬で間合いを詰める為に、 後に回した足に体重を少しずつかける。そして―――― 「アアァッ!!」 「オラァッ!!」 ジンとジョウスケの闘い・・・・・・いや、殺し合いが真に幕を開けた。 |
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