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東京魔人学園剣風帖「剣姫変」
第零話【流転】其ノ弐
「お世話になりっぱなしで・・・本当に有難う御座いました。」
私はそう言いつつ、愛用のバイク・駆狐(かるこ)に跨った。
「へへッ、イイって事さ・・・困った時はお互い様って言うだろッ。」
雪乃さんがあけすけな物言いで微笑む。
それにしても・・・こんな私によく笑いかけられるなぁ・・・と思わず苦笑い
した。
実は、先程の食事で私ってば・・・食い意地が張り過ぎてしまった。
なんと、炊飯器に入った4合ものご飯を一人でペロリ♪(爆)
雛乃さんが「わたくし達にはお気遣いなく。」と言いつつ、ニコニコしてたも
のだから・・・私もついつい調子に乗ってしまった。
にしても、普通に考えたら絶対に食べ過ぎ・・・でも私にとっては腹八分。(ぇ
まだまだ18歳、食べ盛りで伸び盛りだし。(←苦しい言い訳)
「姉様の仰る通りですわ。
様々な方との出会いは、決して無駄になるという事は御座いません。
『一期一会』・・・移りゆく日々の中、いつ・どのようなきっかけで縁(え
にし)が生まれるかは、誰にも知りえぬ事なのです。
皇海様との出会いもまた、わたくし達にとって・・・」
雪乃さんの眉がピクリと動く。
「おい・・・雛っ。」
「あ・・・も、申し訳御座いません。
ついついお話が長くなってしまって・・・。」
雛乃さんの話が長くなるといち早く察知したのか(笑)、咄嗟に雪乃さんが話
を切り上げさせた。
こういった和気藹々とした空気もまた、彼女達が双子である所以なのかもなど
と考えてしまう。
とても微笑ましく感じてしまい、私の顔もつい緩んでしまった。
「また、こちらの方に来られました際には、是非わたくし共の所へもいらして
くださいませ。
・・・お待ち致しております。」
「そうだな・・・また会おうぜッ。」
そう言いながら、2人とも笑顔で私を見送ってくれる。
やはり、彼女達の仲の良さは本当に微笑ましい。
優しさや誠実さ、人柄などが合わさり微粒子となって、周囲に振りまかれてい
るかのようだ・・・なんだか清清しい気分になってくる。
また、会いたい・・・いや、会えるわよね・・・きっと。
推測でも憶測でもなく、何とも形容しがたい・・・根拠のない確信があった。
「それでは、お2人ともどうか息災で・・・さようなら。」
ゆっくりと駆狐を走らせつつ、私は後ろを振り向いた。
勢いよく手を振る雪乃さんと、私に向かって深々とお辞儀をする雛乃さんが、
見える。
「・・・またな〜ッ!!」
「さようなら・・・またお会いできる時を楽しみに致しております・・・。」
こうして私は、彼女達の元を・・・織部神社を後にした。
それにしても・・・。
またお会いできる時を楽しみに、か・・・。
まさか、すぐにそれが叶えられる事になろうとは・・・。
私はこの時、1ミクロン(爆)も思ってはいなかったのだった。
―――――――――。
――――――。
これから5日近くもかけて帰郷の途に着くのだ、このまま帰るのは少々偲びな
い。
そう思った私は、観光がてらで東京界隈を少し見てまわることにした。
・・・とは言っても、今まで来た事は一度もないわけで。
TVなどで見かける有名所ぐらいしか、私が行けそうな場所は無いと言っても
過言ではなかった。
あぁ・・・田舎暮らしにはつらい場所だわ、東京って・・・。(汗)
・・・いいえ、熊本は田舎じゃないわ!
ちょっと東京より緑が多くて、ちょっと東京よりビルが高くないだけよっ!(ぇ
言うたびに気分が滅入ってくるのを、私は抑える事ができないのだった。(爆)
はぁ・・・・。
――――――午後、11時24分
「・・・ふぅ・・・。」
すっかり夜の帳が降りた頃、私は近くにあった公園に立ち寄っていた。
本当に帰郷する前に、ひとまずの休息といったところ。
私は公園の中ほどにあるベンチに腰を降ろした。
「東京って・・・・。」
意識せずにポツリと出た一言。
思ってたほど面白味のある街じゃないわね・・・喉まで出かかったその言葉は、
なぜか声に出すことはなかった。
空気は思いのほか悪く、上空は限りなくスモッグで淀み・・・。
その空を突き破らんばかりに伸びたビル群は、地に伏せる者達を押し潰すかの
如く、無機質な圧迫感を常に与え続けている。
そして、悦楽と犯罪が混在する決して眠らない街・・・それが東京。
って、なに詩人ぶってんだろ・・・私。(苦笑)
よくTV等で放送されている「美味しいお店」って言ったら、殆どが日本の
都心部ばかりにあるため一度自分の足で行ってみたかった・・・これが東京に
行きたかった真の理由だったりするのは内緒だ。(爆)
そして凶悪な犯罪もまた、こっちの方で起こる事が多い・・・だから本当は来
たくなかったというのも本音だったりする。(どっちだ)
まあ熊本はいつも平和だから、今までは無事に過ごして来れたのかな?
これもまた運否天賦・・・・私の内に潜む”何か”が、私を今日まで生かして
くれたお陰なのかもしれないわね。
「さて・・・と、そろそろ帰るとしましょう・・・」
そこまで言いかけたその時。
「っっ・・・・これは・・・!?」
突然、周囲に殺気を含んだ強烈な陰の氣が立ち込めた。
いや・・・。
この表現は不適切か、正確には・・・私が気づく少し前から、既にこの公園内
のあらゆる場所から氣が立ち込めていた。
狂おしい程に絶望を孕んだ圧迫感と、この世の全てを否定するかの如く怒気に
まみれた陰湿な氣・・・。
一体どのような人物ならば、このような氣を放てるのだろうか。
だが実際に今、そのような人物がこの付近にいる事だけは確かなのだから。
「(この氣は・・・一体どこから・・・?)」
周囲に感覚を飛ばし、精神を集中させる。
きっとこの辺りにいるはずよ、きっと・・・。
しかし・・・。
「・・・あ、あれ・・・?」
どういう事なのだろうか。
いつの間にか周囲に放たれていた氣の気配は薄まり、その代わりに収束した氣
が、道を形作っているかのように何処かへと続いていた。
・・・まるで、私を誘っているかのように・・・。
どうするべきか・・・誘いにのる?それとも無視して熊本に帰る?
・・・いや。
私にとって、そんな事は考えるまでもなかった。
「いいわ・・・誘いに乗ってあげる。」
口元に笑みを浮かべつつ、私はそう一人ごちた。
ここまで挑発されているのに乗らなかったら、臆病者の意気地なし。
こんな氣を放つような輩だ、間違いなく悪を成す者であるはず。
例え天が許しても・・・この私が決して許しはしない。
誰が言った訳でもなく、私が自分で決めた事。
後悔なんてこれっぽっちもしない・・・逆に闘争本能がフツフツと沸いてくる。
悪を滅するのは、この私の役目!!
ここで引いておめおめと帰ったら、母さんからお尻百叩きの刑だろうし。(ぇ
「・・・・よし、いくわよ・・・。」
今一度自分に喝を入れ、私は颯爽と駆狐に跨った。
さぁ悪党、首を洗って待ってなさい・・・・私が退治してあげるから!!
第零話【流転】其ノ弐 完
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