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| 5 「たった今、三宅島を通過。そろそろ自衛隊の警戒が 本格的になってくるわ」 「了解」 ジンとカズエは、それだけの短い会話をして通信を切った。 今、二人の間には大きな溝がある。ジンに起きた体の変調を機に、二人の意見が大き く食い違った。 ジンの身を案じ、復讐を止めさせようとするカズエ。己が身よりも、復讐を成す事だ けしか見ていないジン。結局ジンがコクピットに入り、操縦する事を止める事は出来 ないため、カズエは自分の意見を通す事を止めて、ジンの身を守れるように出来るだ けのフォローを行う事にした。だが、二人の間は縮まる事無く、重苦しい空気が二人 を包んでいた。 しかし、ジン自身もいくら「自分はどうなってもいい」と言ったからといって、人間 でなくなることを望んでいるわけではない。できる事なら、人間としての生を全うし たいとは思っている。だが、今の自分にとってしなくてはならないのは、イスルギ重 工に対する復讐だ。馬鹿どもの手によって志半ばの死を余儀なくされた仲間達に、上 司であり良き友人でもあったナオト。そして自分のような者に志と言う物を教えてく れたビアン総帥・・・・・・。 今のジンには、彼らの遺志を受け継ぐ義務がある。何をしてでもそれを成し遂げねば ならない責任がある。そうである以上、たかが自分を守る為に躊躇う事など出来ない ・・・・・・。 それなのにカズエは、死んだナオトの婚約者にもかかわらず、そのことを理解してい ない。大切な人が死んだのなら、その者の思いを何に変えても守らなければならな い。そう考えるジンには、カズエの意思が理解出来ずにいた。その時――――― 「ジン!レーダーに機影・・・・・・!?」 「何だ!?」 ジンは、ヴァルゼリオンを停止し咄嗟に身構えた。だが見渡す限りの大海原には、空 を飛ぶ海鳥は見えても、敵機などはどこにも見えなかった。 「カズエさん・・・・・・。本当に敵機がいたのか?」 「いる・・・・・・けど・・・・」 「なんだよ?いったいどうした?」 「説明がしにくくて・・・・・・自分でもレーダーで確認してみる?」 「・・・・・・!?」 ジンは、自分でもレーダーを確認してみるが、そこには確実に接近してくる機影が あった。だが、妙な事に敵機をあらわす光点の動きが航空機とは思えないほど大きく ぶれていて、高度を示す数字も定まらずに動き続けていた (なんだ、この動き?こんな動きが出来る機体がイスルギに?) ジンは、目視で敵機を捜すが、そこにも目視できる物は無い。 「ジン!上!!」 「何っ!?」 カズエの言葉に咄嗟にジンは上空に目を向ける。そこにあったのは、自分目がけて放 たれた豪雨のような大量の小型ホーミングミサイルだった。 「奇襲か!?」 「大丈夫!ヴァルゼリオンならこの程度のミサイルなんか、Gテリトリーを張ってい ればいくら喰らってもダメージにはならないわ」 「ああ。だからこのまま突っ切る!」 ジンは、すぐさまGテリトリーを張り、ミサイルの雨を突き進む。すると、予想通り ミサイルは、徐々にジンの前方から当たるようになる。これは敵機がジンの進行を止 める事為の物だというのは明白だった。だが、カズエの言葉通りミサイルは全くヴァ ルゼリオンには通用しない。 「チッ・・・・・・たかがこの程度で――――――」 ジンは、自分の言葉に何か引っかかった。あきらかにこの攻撃はおかしい。そう思っ た瞬間、ジンの体は反射的にミサイルの射線から外れ、海面に向かって動き出した。 ミサイルは少しずつジンを追尾し始めてきたが、ジンはさっきまでと違い、必死にミ サイルの射線から外れようと動いていた。 「ジ・・・・ジン!どうしたの!?」 「多分・・・・・・あのままじゃ、まずい事が・・・・・・」 「まずい事?それってどういうこと?」 「わからない・・・・・・ただ何か――――」 その時、ジンはミサイルの中に一つだけ何か違う物を見つける。それを見た瞬間ジン は何かに気づき、背中に悪寒が走るのを覚えた。 「なるほど・・・・・・そういう事かよ」 「そういう事・・・・・・って、一体何が?」 「見ればわかるよ・・・・・・」 ジンは右手に重力の塊を生成し、飛来するミサイルに投げつける。塊は他のミサイル を巻き込みながら、ジンが違和感を感じたミサイルに命中する。すると、ミサイルの 外装が砕けると同時に、中から大きな『網』のような物が飛び出し、宙を舞った。 「あれは・・・・・・」 「スパイダーネット・・・・・・。どうやらあのまま突っ込んでいたら、あれで動きを止め られていたろうな」 「でも、スパイダーネットぐらいじゃ、ヴァルゼリオンは・・・・・・」 「悪いが、あのネットはアンチ・Gテリトリー仕様だ。ドミネーターでも十数秒は動 きが止まる」 「!?」 「だが、あれを読むとはどうやら基本は忘れていないようだな、ジン」 「この声は・・・・・・」 「どこを見ている。後だ、ジン」 「・・・・・・オジキ」 突如聞こえてきた声に、ジンは、そう呟いてから後ろを向く。そこには今までに見た 事の無い、真紅のガーリオンがあった。それこそがジンの叔父「ノブユキ・タカナカ (高中 信行)」の乗る機体『ヴァーミリオン』だった・・・・・。 |
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