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| 10 「じゃあな・・・・・・楽しかったぜ!!」 ジョウスケは、左 手でヴァルゼリオンの肩を軽く叩きながら、右手の銃を後頭部に突きつけ、引き金を 引く。 「クッ!!」 ヴァルゼリオンは、咄嗟に頭をヴァルレオンの側頭部にたたきつけた。 「うわっ!!」 予想外の頭突きに、ヴァルレオンは手のロックが外れ、バランスを崩して銃弾をあ さっての方向に撃ちながら地面に倒れるが、ヴァルゼリオンは倒れたヴァルレオンに 追い討ちをせずに間合いを取った。 しかし、その行動はジンが無意識的にとった行動だった。いくら自分の拳を無傷で止 められるという状況があったにせよ、チャンスを不意にしてしまうという咄嗟の判断 に、ジンは自分自身で驚くほどだった。そして、その動揺を察してか、ヴァルレオン は慌てず騒がず、ゆっくりと体を起こした。 「追い討ちかけて来なかったな。もしかしてビビってた?」 「まあな・・・・・。これでも小心者なんだよ」 軽口を叩きながらも、ジンは自分の拳を顔面で受け止められた事を考察し、すでに大 体の理由を理解していた。 「どうした?」 「なんでお前に拳が止められたかを考えていたんだよ。そして、大体は予想がつい た」 「へえ?そいつは聞きたいな」 「原因は・・・・・『慣性』。ヴァルゼリオン、ヴァルレオン共に戦闘能力の要である感 性制御にある」 ジンはそう言った後、溜息を一度ついてから話を続ける。 「簡単に説明すると、本来、拳のような物を使って対象を破壊するという事象は、慣 性によって運動エネルギーが保たれなければ成り立たない。だが、もしここから慣性 を取り去ってしまったら、運動エネルギーの保持は成り立たず、物質同士が衝突して も破壊は成り立たない。例えどれほどの腕力を持っていたとしてもだ」 「・・・・・・・」 「お前は、それを知っていた。だからお前は、俺が拳に慣性をかける寸前に、逆に自 分の顔面を当てたんだ。そうする事によって俺の拳の運動エネルギーは消え、破壊力 はほぼ相殺される。そうだろ?」 「まあ・・・・・・ピンポンってとこかな。」 ヴァルレオンは、ほとんど驚いた様子を見せずに淡々と言葉を返した。 「実際は、そんなに小難しい事を考えていたわけじゃないけどな。ただ、慣性を消し ている時に当たったところでダメージが無いというのはわかっていたしな。けど・・ ・・・」 そう言いながら、ヴァルレオンは手に持っている銃をまわし始める。 「こっちの方は、そうはいかない。いくら身体の慣性を消したって、銃弾の慣性は消 えない。知ってるだろ?俺達の機体にあるドミニオン・システムは、自分の身体の慣 性しか消せない事を・・・・・」 ヴァルレオンは、持っている銃をお手玉のようにして遊びながら言葉を続ける。 「わかるだろ?そっちのパンチは受け止めても何とかなる。けど、こっちの銃弾は受 け止めるのは無理。もう、こっからお前が勝てる要素は残念ながら0だ。俺としても お前を殺したくは無いからさ、降伏してくれ」 明らかに素人の動作と判断・・・・それにもかかわらず、自分をここまで追い詰める 最強の素人。ジンは、その比類無き強さを見せ付けたジョウスケと言う男に対して、 尊敬の念すら湧き出ていた。 だが・・・・・ 「終わったと思っているのか?」 「え?」 「まさか、これで終わったと思っているのか?言っておくが、俺は、この程度で勝っ たと言われるほど、底の浅い生き方はしてないからな」 そう言いながらヴァルゼリオンは、ヴァルレオンに対して人差し指を突き出した。 「一発だ。後、たった一発だけで俺はお前に勝ってみせる」 「・・・・・・・・・」 ヴァルゼリオンの一言を聞いて、ヴァルレオンは遊んでいた銃を元のように両の手に 戻し、溜息をついた。 「はぁ・・・・・。なんつーのかね・・・・。何でたった一言で、五分に引き戻しち まうかねえ・・・・」 「それが格の違いって奴だよ。お前も100人くらい殺せば、これぐらいの格はつい てまわる」 「・・・・・これ以上怖い話はやめてくれよ。夜中に一人でトイレにいけなくなっちま う」 軽口を叩きながらも、ヴァルレオンは既に構えを取っていた。 「だから・・・・早くケリをつけようぜ!!」 そう言って、ヴァルレオンは先手を取った。機先を制したヴァルレオンは、一瞬で距 離を詰め、左手の銃をヴァルゼリオンの眉間に突きつけた。 ヴァルゼリオンは即座に反応し、突きつけられた銃を右手で捌き、すぐさま左拳を突 き出す。だが、ヴァルレオンは突き出された左拳に対し、慌てる事無く右手に持つ銃 を突きつけた。 「チッ!!」 ヴァルゼリオンは、余裕を見せ付けるヴァルレオンの態度に舌打ちをする。そして、 予想通りと言うべきか、ヴァルゼリオンの左拳は、ヴァルレオンの銃によって、何の 抵抗も無く止められた。 「クソッ!!」 ジンは吐き捨てるように呟きながら、銃弾を撃たれる前に手を引いた。止められるの は予想していたものの、実際に止められると心中穏やかと言うわけにはいかなかった が・・・・。 しかし、ヴァルゼリオンはそれでも躊躇う事無く果敢に攻め込んでいく。両手両足を 駆使して、上下左右に散らしながらヴォルレオンに嵐のような連打を見舞う。 だが、ヴァルレオンにとってはその程度の連打などは、ごまかしにすらなっていな かった。ヴァルレオンは、ヴァルゼリオンの放つ連打に対して、一歩も引く事無く、 その全てに対して銃口を使って受け止めた。 「遅せえ!遅せえぞ!!」 「クッ!!」 「速く!!もっと速くだ!!」 「うるせえ!!」 必死に打撃を打ち込むヴァルゼリオンに対し、余裕で全てを受け止めるヴァルレオ ン。さっきの言葉とは裏腹に、もはやイニシアティブは完全にヴァルレオンに移って いた。 「よし。じゃあ・・・・・・そろそろこっちからも行くか!!」 その言葉と共に、ついにジョウスケは攻勢に転じた。ヴァルゼリオンの攻撃を受ける と同時に、すぐさまトリガーを引いて銃弾を撃つ。 「クッ!?」 ヴァルゼリオンは、すぐさま拳を引いて銃弾を回避する。だが、回避したところへも う一方の手に持っている銃が顔面に突きつけられた。 「悪いけどな、そろそろ終わらせたいんだよ!」 言うが早いか、ヴァルレオンは躊躇無くトリガーを引いた。だがヴァルゼリオンは、 弾丸発射前に右手で銃を払いながら身体ごとヴァルレオンの左手側に回りこむ。 (無駄なのはわかりきってるが・・・・・・これしかねえ!!) ヴァルゼリオンは、払った左腕を両手で掴み、ヴァルレオンの関節を極めながら、背 負い投げを放った。しかし・・・・・・ 「笑わせんな!!」 投げられたヴァルレオンだったが、腕を取られた瞬間に自ら宙に飛び、体勢を入れ替 えて着地した。 着地すると同時に、ヴァルレオンはヴァルゼリオンの腕を掴み、自分の右腕をヴァル ゼリオンの左腕に絡め、肘関節を極め返して逃げられないように身体を密着させて、 ヴァルゼリオンの喉元に銃を押し付けた。 「ぐっ!!」 「ドミネーターに慣性支配がある以上、こういう投げは通じねえ。わかりきってた事 だろ!?」 「・・・・・・・・・」 「何を狙っていたのか知らないが・・・・・・あの瞬間に投げなんて、博打にもなっ てねえぞ?」 「よく喋るな・・・・・」 「は?」 「不安なのか?ここから何をされるかが・・・・・・。どんな手を使ってこの状況をひっく り返してくるかが・・・・」 「悪いが、今度はハッタリに騙される気はねえよ。しっかりとケジメをつけてやるさ !!」 ヴァルレオンは、自分に言い聞かせるように叫び、そして銃を強く握り締め、引き 金を絞り込んだ。 鋼鉄同士がぶつかり合う音がした。そして鋼鉄の膝が、身体が地面に崩れ落ちた。そ の目は完全に光を失っていた。 「終わったか・・・・・」 完全に力尽きた相手を見下ろして『ジン』は呟く。 「言ったろ?後、たった一発だけだって・・・・」 |
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