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| 『弾丸』が四つの機体に分裂する。 《インパクトイエロー、機体以上なし》 《こちらハッピーダーク、異常なーし》 《あー、ブラボーグレー。右燃焼器がうまく点火しな―――あぁ大丈夫問題なしだ》 それぞれが編隊飛行に移る。 戦装機(ガード)は軍備上戦車に部類されるが、無重力空間での戦闘に特化した ガーランスは戦闘機に分類される。よって四期編隊というのが基本になるわけだ。 「目標は軌道エレベーター『バベル』。そこに現在確認されているのはポーンクラス が二十前後。一人ノルマは五匹だな」 《管制が急がせたのも納得ですね。米国が巨額をはたいて建造した軌道エレベーター が襲われてるんですから。大統領も面子にかまわずわたしたちに依頼したというの頷 けます》 ベル、その言い方は間違っている。それではレインズ(大統領の名前だ)と私たち の仲が悪いみたいじゃないか。あの気のいい中年は無駄なことに税金を使いたくない から私たちに依頼しないのであって、私たちが嫌いなのではない。 現にうちの空母を現役で引退したときに、我々によこしたのはレインズなのだ。 《ってーと、ポーン一匹につき五千ドルだから、アメリカから支払われる額をプラス αすると……ガーランスの整備費を引いても結構いい額になるじゃねえか》 《たまには星条旗のために働くのも悪くないだろレオ?》 《歌うか?アンタの現役時代の音源が、俺様の音楽リストに入ってるぞ》 《マジ!?うわ、なんのときに歌ったやつだろ?》 ブラボーグレーことレオナルド・ランターナとディジーの話はとりあえずスルーし ておく。 補足を入れておくとディジーはもとアイドルで、『オウラ』という二人組みユニッ トで活動していた。それなりに売れていたようで、解散した今もその人気は衰えてお らず、活動四年でアルバム十一枚。その一枚一枚の現存数の少なさも、少なからずそ の人気に影響しているのだろう。 まあどうでもいいのだが…… 「今回は『バベル』を守ることが任務だ。ばかばか撃って軌道エレベーターを傷つけ ないように。わかったなディジー!」 《オレ名指しで注意ですか!?》 「貴様は原作版でコロッセオをぼろぼろにした実績があるからな」 《そんな舞台裏事情!?》 そうこうしているうちにバベルが見えてくる。巨大な地球を対比して見ると、まる で針が刺さっているようだ。 そしてその先端部、虫のように蠢く物体…… 「戦闘領域突入!一匹として地球圏に落とすなよ!」 《了解!ブラボーグレー、エンゲージ!》 《レオに続きます。ハッピーダーク交戦!》 二機のMk-2編隊を抜け飛び出していく。 前に登場したようにレオの武装は超振動効果で内臓から破壊する鎚。それに対して ベルの武装は戦斧。それも超振動ではなく火薬の力で破砕する威力をあげる純粋な外 部破壊武装だ。 どちらにしても近接武装だが、機動力の高いガーランスにしてみれば命中率の低い ヒドラの発光射撃など問題にならない。ポーンクラスならば我々フェンリルの敵では ないということだ。 「ディジー、貴様はあそこから漏れたやつを撃ち殺せ」 《AAガトリングの威力なら一秒も正射すれば十分だしな。了解。行きな!》 スロットルを開け放ち、既に殺戮を開始している二人のもとへ飛ぶ。 「アイズゴールド、エンゲージ!」 叫んだ頃、私はすでにバベル最上部に到達し、一匹のヒドラを両断していた。 接地すればその影響でバベルに傷がつきかねないので、そのまま逆噴射し滞空を続 ける。 群がってくる右に二。左に一。 腰に設置されていた拳銃を抜き左の一匹に向け撃った。ちょうど口蓋を開いたとこ ろに七発叩き込んだのだから殺傷効果としては十分。 飛び出した薬莢を回収。 やっとこの新しい火器管制のクセがわかってきた。最初はあまりに言うことを利か ないのでゼロ距離射撃しか出来なかったが、慣れてしまえば悪くないか…… 右の二匹――― そう思った瞬間、片方が頭から胸まで陶器のように砕け、もう片方が外骨格の隙間 から黒い血を撒き散らし死に絶えた。 ヒドラが倒れ、その後ろに二機のMk-2が立っている。それぞれ斧と槌を持つ機体 が。 「カウントは?」 《わたしが三。レオが四です》 《どうも釈然としねえ……鈍重すぎて張り合いが無いぜ》 「仕方ないさ。地上ではもっと暇してるやつが要るんだから我慢することだな」 ↓ 語り部/カズイ ハンガーにおかれた小さなブラウン管に人だかりが出来ていた。どうやらローンベ ルクのプロトガーランスの視界を直接送ってきているらしい。 「ああ!レオの野郎、あんな無茶な操縦しやがって」 「あれじゃ五番シャフトの交換は余儀ねえな。おい用意しておけ!」 「たく、俺たちの苦労考えろっての」 「今回はディジーが参戦してねえだけマシだろ」 「バカ!お前アイツがどれだけ修理費溜め込んでるか知ってるのか? いい加減払っ てもらわねえと」 なるほどね。こうやって現在の情報を逐一取っておけば、帰ってきてすぐに修理に 入れるか……こういう四六時中有事の部隊ではそういうことも必要ってことだな。 「あれ、こんなところで何してるんですか?」 メカニックの少女―――確か名はフィオ・コッツォリーノとかいっただろうか? コッツォリーノ……呼びにくいから呼ぶときはフィオと呼ばせてもらおう。 彼女が俺を見つけ話しかけてきた。 「フィオちゃん主任、そいつ誰です?」 「フィオちゃん主任言うな! さっきローンベルク隊長が連れてきたフェンリルの新 メンバーです。っていうかあなたさっき、ローンベルク隊長とシミュレーターで戦っ てましたよね? 怪我とか大丈夫なんですか」 「ああ、特には」 そう言った瞬間メカニックの間から感心の声が上がった。 「あの姉御と戦って怪我無しだって」 「へえ、大したもんだな。大抵あの人とやり合えば骨折くらいするのに」 おいおい、部隊員をもう少しいたわろうぜ…… 「改めて皆に紹介しますね。えっと……」 「聖偽だ」 「あ、すいませんヒジリギさん。えーっと」 フィオはそんなことを言いながら、つなぎのポケットから一枚の紙切れを取り出 す」 「なんだそれ?」 「ローンベルク隊長に渡されたリストです。武装は槍ですか……オギさん、試作バー ストランスってどんな具合ですか?」 「ああ、アレかい?もう実戦投入可能なレベルまで出来てるぞ」 一際油まみれのつなぎを着た中年が応える。丸メガネの東洋人……オギという名前 からおそらく日本人だろう。 「じゃあそれ試してみましょう。ダメならこないだ企画が上がったドリルに予算を回 します」 「アレがダメとは言わせねえぞ。回数制限はあるがゴジラだってぶっ飛ばして見せる ぜ!」 ……ちなみに俺はゴジラと喧嘩して勝つ自信ないぞ。 「それと、副武装に超振動(オシレイト)ソード2ですか」 ふとブラウン管に目を戻せば、ローンベルクの駆るプロトガーランスが、超振動刀 でヒドラを切り裂いていた。メカニックたちの声を拾えば、やはりローンベルクの腕 は半端じゃないのだろう。 「微調整は機体が届いてからじゃないとできませんから。一両日中には届くと思いま す」 「おーあったあった。ヒジリギくーん、バーストランスの取扱諸注意のしおりいるか い」 いるいらない関係なく、オギさんはしおりを押し付けてきた。まるで修学旅行のし おりだが気にしなことにしよう。 「それはそうと、さっきから気になっているんですが」 ? 「そのブーツなんですか?」 そういえば俺は手にブーツを持っているんだった。 「ローンベルクが押し付けていった」 「ってことは隊長のですか?」 俺はうなずいた。 「またあの人は……」 「また?」 「あの人が出撃するときいつもハンガーにブーツが残ってるんです。血圧の調整は確 かにパンツで出来ますが、宇宙は冷えるから履いてくださいっていつも言っているの に。女性なんですからもう少し気を遣ってほしいものですよ」 理解不能だ。すでに…… 「ん?」 一人のメカニックが不意に声を上げた。 「どうした?」 「いや、今モニターに……人工衛星か何かだったかな」 なんにせよローンベルクたちは、圧倒的な力をもってして次々とヒドラを狩ってい く。 ガーランス……もしもこの機体があのステーションに配備されていたのなら。 いや、もしもなんていまさら突き詰めても仕方が無い。 「な!? カズイ・ヒジリギ?! なぜあなたが残っている!」 突然背後から声がした。 見覚えの無い……女。 いや、見覚えは無いが、その声に聞き覚えがある。シミュレーターで俺と戦った長 刀(グレイブ)の女だ。確かレベッカとか呼ばれていただろうか。 「ローンベルク隊長と共に出たのではないのですか!?」 「ヒジリギさんには機体がありませんよクロフォードさん」 フィオの言葉に納得がいった様子は無い。どうも俺に負けたことがそうとう悔し かったらしい。 まあ、あの中ではこいつが一番強かったし、もしフェンリルに新しいメンバーが加 わるとすれば、俺ではなく彼女だったのだろうから当然か。 「まあ、確かに予備の機体を出せば出撃できないこともありませんが、それは緊急時 に出撃するためのものですよ」 見ればハンガーの端にパーソナルマークの描かれていないMk-2があった。 損傷によって稼動できなくなった場合。トラブルで出撃し出来なくなった場合。 または――― ヴィ―――――ッ!!! 赤い回転等が突如として光り、アラートがハンガーに響いた。 または、誰もいない状態で、別のヒドラたちが現れた時などのための予備なのであ る。 ↓ 語り部/タリア 《こちらエスペランザ管制、ローンベルク隊長へ緊急入電!》 四匹目のヒドラを倒したところで、緊急用の無線が唐突に悲鳴を上げる。 「どうした?」 《インド洋上空にヒドラ別働隊が出現しました。至急エスペランザに戻り再出撃して ください!》 ち、他の群か。まったく今日はなんなんだ。普段なら週に一度程度しか現れなかっ たのに、今日に限って既に三つ目の群だと? 何か天文学的にそういう日なのか今日 は。 「了解。全機へ。聞いてのとおりだ。私は一度降りる。管制、ヒジリギを予備の機体 で出撃準備をさせておけ!」 エスペランザのカノンカタパルト『ホッホドルックプンペ・ツヴァイ』は砲弾の支 柱となるフレームに複数の機体を設置するもので、一機では重量バランスの関係から うまく撃ち出すことが出来ない。だからといって二機降ろしてしまうと、こちらの戦 力がやや足りなくなる。 ヒジリギを引き入れられたことは不幸中の幸いだな。 《インパクトイエロー了解―――》 よし、再突入起動の演算を――― 《待ってくださいタイチョー!》 突然ベルが割り込んできた。 《追加オーダー来ます!》 「そのくらい、お前ら三人で何とか―――」 《ナイトです!五匹も!》 ↓ 語り部/カズイ 「急げー! 働け野郎ども! ローンベルク隊長が帰ってくるぞぉ!」 ハンガーが一気にあわただしくなった。 俺も予備の機体のコクピットに飛び込み、細かな設定を始めていた。 「腰部ジョイントはオシレイトソード2と76mmハンドガン。オシレイトソードは折ら ずに使えるし、射撃は火器管制が必要ない腕って話しだから勝手にやらせてもらっ た。それと腕部固定装備の換装どうするヒジリギくん?」 Mk-2は腕部分の武装を換装できるらしくいくつものパターンがある。渡されたリス トには小型拳銃をスパイ映画みたいに装備するものや、ナイフを収納しアームが飛び 出し瞬時に構えられるもの。露骨に鉈(ダガーだろうか)が装着できるものもあっ た。中にはパイルバンカーやチャクラムシューターというのも存在するらしい。 「普通に固定機関砲を。アレが好きなんだ」 「あんな貧弱の武器使うのかい」 俺はその貧弱な武装でヒドラを駆逐してきたんだがな。 「オギさん! ヤベえことになった」 「あん? どうした!?」 「ローンベルクさんたちがナイト五匹とエンゲージ」 「ナイトだァ?!」 ナイトクラス……ポーンよりも強力。先ほどプロトガーランスに二人乗りしたとき はローンベルクがあっけなく倒してしまったが、やつの機動力はガーランスに勝ると も劣らない。ポーンとナイトでは力が違いすぎる。 もしあの時、俺だけであったならさすがに苦戦しただろう。 それが五匹……これじゃあローンベルクが降りてこれないぞ。 「どーすんだよ!一機じゃカノンカタパルトで射出できないぞ!」 「だけど予備の機体なんてないっスよ」 「フィオちゃん主任、こんな『こともあろうかと』とか言って秘密兵器取り出したり しないのかよ」 「それはキャラクター上あなたの役割じゃないですかオギさん!」 話ではガーランス二機以上じゃないとあのカタパルトで撃ち出せないらしい。 いざとなればガーランス一気分の重りを詰め込んで打ち出すことも出来るが、ス ペースデブリ削減の国際条約に背くことになる。 「私に出来ないでしょうか?」 声がした。 俺の乗るガーランスの足元に声の主が立っている。 レベッカ・クロフォード…… 「ガーランスではなく戦装機で構わない。あなたが出撃しそれで事が片付くというの なら―――」 「誰かあの馬鹿を黙らせてくれ。耳障りだ」 「ひ…ヒジリギさん!」 「戦装機じゃアイツが得意なグレイブは重量上使えないんだ。振り回した時点で二重 関節の機構上、長物を振り回す遠心重力に耐えられないんだろ? ナイフすらも。そ れとも何か? 使用が可能な軽火器でつっませるか? ガーランスの性能になれすぎ たお前じゃ無理なんだよ」 「く……」 彼女は完全な近接型。俺だって戦装機に乗るんなら、一匹ずつ相手にするのも二度 とやりたくない。 もう一機ガーランスがあれば、彼女の腕ならポーンクラスを相手にする分には問題 ない。 たった一機足りないだけでヒドラが地球圏に落ちる。なんて馬鹿な話だよ。 一匹でも落とせば、どこかの怪獣映画さながらの状態になるってのに。 「―――あ」 「どうしたんですかヒジリギさん」 「出るぞ」 言って、俺はコクピットを飛び出した。 「どこ行くんですかヒジリギさん!」 「何とかする! その機体にはクロフォードを乗せて用意させておけ」 『予備』の機体をクロフォードに押し付け俺は一人駆け出した。目指すはハンガー 出てすぐの通気口。ローンベルクが上がってきた竪穴がこれなのだ。 どんなに走っても、正規ルートなら五分。だがこの竪穴を降りれば…… 「真っ暗闇にフリーフォールかよ……」 ローンベルクのブーツを手にはめ、俺は飛び降りた。 垂直落下三十メートル。 真っ暗な奈落の底へ。 風を切る。 だがそんな中でも頭は冷静に働いてくれた。 落下した距離を身体で測り、残り三分の一まできたところで四肢を伸ばす! ブレーキの甲高い音が竪穴を振るわせた。摩擦熱がブーツを貫通し、手に脚に伝 わってくる。タイヤが焼ける匂いにてる…… そして―――俺ははめてあっただけの蓋を突き破り、穴の底に着地した。 ローンベルクには悪いが、アイツのブーツは磨り減り、左右で高さが違っている。 軍隊じゃないから支給品じゃないもんなぁ……弁償しないと。 って今はそれど頃じゃなかったな。更にその下だ。 この艦に残るもう一つの機体のもとへ――― 「そういえば照明消し忘れてたな」 呟き、光の中にそびえる人型を見上げる。 ―――マキナサントス――― 白銀の光を鈍く光らせながら、俺を見下ろしている。 その眼差しは俺をどこまでも誘う。 「一緒に来てもらおうか。これからテメエは俺の鎧だ」 コクピットへ飛び込む。 入口のそれは戦装機と変わらない。 だが――― 「おいおい……なんだよこれ」 コクピット内部は別世界だった。 シートなど無く無重力で、光に抱かれている。 操縦桿など無く全てが光の文字と糸により構成されていた。 それに広い。これが本当にコクピットだというのか。 どうすればいい? 何をすればいい? そう思った頃には俺は中空に手を伸ばし、操縦桿にあたるものを握っていた。 誰かが教えてくれている…… イメージが頭の中に沸いてくる。 どう動かすか。 そんな行動的な感覚でこいつは動かせない。 ようは、どう導くか。 自転車を乗るのに考えるものはいない。 車の運転だって考えるよりも慣れである。 「オーケー。わかったよ……」 要するに、どこかの人型決戦兵器と逆なんだ。考えるんじゃない。 そして動かせる、動かせないの問題でもなく。 ―――こいつは動く。 「動け」 そうして俺はハンガーの壁にあった出撃用パネルを叩き、その瞬間、ハンガーの底 が抜け『俺たち』は海に落とされた。 ↓ 管制塔 「あれ? 何だこれ……」 「どうした?」 「いえ、艦の真下に突然影が……エンジン音もないのでクジラか何かでしょうが、そ れにしたって突然すぎる」 ソナー員がそう言った瞬間だった。 海が盛り上がりそれは飛び出してきた。 この黒い狼たちの巣に似つかわしくない白銀の戦装機。 だがその姿は傍観者全員を魅了するに足る雄々しさを持ち、そのまま甲板に着地し た。 ↓ 飛行甲板。 語り部/フィオ 衝撃に驚き、わたしたちはハンガーから飛び出した。 その瞬間、しぶきが雨となり、青空に虹をかける。 そして―――白銀の機体。 「マキナ……サントス……」 つい呟いてしまった。 だが一体どうして……否、どうやって動いているというのだ? この機体は五年前ローンベルク隊長が降りてから微動だにしたことが無かったとい うのに―――それだけの魔力をこの機体に提供できる者がいるのだろうか?! 《おいフィオ! クロフォードの準備は整ってるんだろうな》 ひ…ヒジリギさん?! 「どうしてその機体を!」 《んな事はどうだっていいだろ。っていうかむしろ退け。エレベーターにいるな。ハ ンガーの中からじゃねえとカタパルトの設置が出来ないんだろ?》 それにコイツの武装もさせなければいけない。 「全員退けーッ!マキナサントスが入るぞぉッ!」 呆然としていたわたそたちにオギさんの命令が走る。 「マキナサントス? 動かないんじゃなかったのか」 「でも動いてる!」 「サボるんじゃねえクズども!」 そんな風に騒ぐメカニックを蹴散らしがら、下に止まっていたエレベーターに降り てきた。もっと優しくやってもらわないとエレベーターが壊れる。 「オギさん!マキナサントスにはジョイント無いけど武装できますか?」 「まかせろ!こんなこともあろうかとオシレイトソードの鞘を造っておいた!」 ほらみろ、『こんなこともあろうかと』がこんなに似合う人ってのも中々いないと 思うよ。 「全員で掛かってください! ほらそこ! 呆然としてる暇があったら手伝え!」 語り部/カズイ たく、マキナサントスを前にしたせいかどいつもこいつも態度変えすぎだ。 Mk-2の武装にはあ少なくとも一分かかっていたというのに、わずか数秒で武装が終 了した。滅茶苦茶速い。 《ヒジリギくん、バーストランスは楯の裏に収納してある。幸いマキナサントスはプ ロトガーランスよりかなり小さいから、その装備でも『砲弾』として撃ちだす分には 問題ないだろう。ただし槍の金属表面から荷電粒子バーストを放出するだけあってト リガーが引けるのは三回までだ。いいな!》 「よく分からんがわかった」 《レベッカの面倒ちゃんと見てやるんだぞ》 そんなやり取りをしながら。機体が砲弾として固定された。 《カズイ・ヒジリギ……》 と、噂をすればクロフォード本人から通信か。 「なんか用か……」 《一応、私はあなたの指揮下に入ることになります。いいですね》 「はあ……了解した……」 つい溜息が出た。はっきり言って面倒だったから。 《…………どうでもいいのですが、あなたはイヤなヤツですね》 「ほっといてくれ。お前に文句言われる筋合いじゃない」 《何ですかその言い草は! そうだ私のこと娼婦扱いしたアレ取り消してください》 無線のむこうで子供みたいな調子で文句を言ってくるのは、もうこの際だから無視 する。 《ヒジリギさん、フィオです。ローンベルク隊長にあなたたちが出ると伝えたら、 メッセージを返してきました。読み上げますね。『ヒジリギ、クロフォード両名の出 撃を承認する。なおカズイ・ヒジリギのコールサインを『エッジシルバー』とし、機 体コードTF-05。同じくレベッカ・クロフォードを『ブレイブバイオレッド』、TF-06 とする』……以上です》 そのメッセージが終わったころ俺たちのカノンカタパルトへの装填が完了する。 視界に入るのはセラミックシールドの裏側と、そこに固定されたバーストランスだ け。 管制からのカウントダウンが響く。 再び宙へ―――― そしてカウントがゼロになった瞬間、思いのほか小さな爆発音と急激なGが自らの 身体を襲った。 音が小さかったのはあっけなく音速を超えれしまったからだろう。 ここまで突然の加速となるとさすがに身体に悪い。発射角から考えて瞬間的に音速 の五倍は出ていることになる。考えただけで吐きそうだ。しかもこの後に待つのはヒ ドラとのドックファイト。キツイ仕事だよ…… 《大丈夫ですかカズイ・ヒジリギ》 皮肉気な口調でクロフォードが言ってくる。おそらく訓練カリキュラムに含まれ平 気なのだろう…… 「……問題……無い。もう慣れた」 これでターンとかされた日にはリバースしかねないが、直線的に飛ぶ分ならいつも 感じる程度になっている。問題はあの急加速だ。アレに慣れるのはもっと先になるな …… 《重力圏を抜けました。別れます》 その瞬間、機体が揺れた。見上げればクロフォードの駆るMk-2が平行飛行してい る。 《『地球は青かった』……私実際に宇宙へ出るのは初めてなんですよ》 「『だが天に神はいなかった』……ユーリ・ガガーリンの手記か」 《神がいるのはここじゃない。だがどこにいるかは分からない》 「それでも神は実在する。なにしろ俺は神の創りし聖者を駆っているから……来る ぞ」 望遠表示に映し出される白いケモノ。 極彩色に煌く背部発光体がイヤな光を放っていた。 俺たちは楯を構え剣を執り、人類唯一の天敵を駆逐すべく二つの機体がフェンリル と呼ばれる獣となる。 ―――さあ、狩りを始めよう。 「エッジシルバー、エンゲージ」 |
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